今年の春。長野県建築士事務所協会松筑支部の皆さんよりお声がけいただき、松本の地にてONE RIVERの活動をご紹介させていただく機会をいただきました。松本市は以前からエリアビジョン策定やそれらに関連した社会実験事業が実施されるなど、様々な点で参考にしていたまちのひとつでした。また豊かな自然資源や地形が生み出すまちのコンテンツづくりにも興味があり、今回の旅ではそんな松本市の魅力をしっかり勉強しようと久しぶりの天野さんとの二人旅。限られた時間ではありましたが、松本市の皆さんのおもてなし力の高さにより充実した視察(旅)にすることができました。
不思議な縁がつながる岡崎と松本。天野さんによる渾身の視察レポート(旅の記録)をぜひご覧ください!(岩ヶ谷)


はじめに


さる4月25日、岩ヶ谷くんと僕・天野で長野県松本市へ行ってきました。今回、「長野県建築士事務所協会松筑支部」総会の講演会講師として岩ヶ谷くんが招かれたことに便乗し、以前から気になっていた松本の地を訪れることができました。ONE RIVER的レポート、というか天野視点の偏った旅の記録をお届けします。


現在、松本市では、松本城の三の丸エリア+国宝・旧開智学校をつなぐ一帯を対象として「松本城三の丸エリアビジョン(https://www.matsumotojo-sannomaru.com/vision/)」という構想をつくり、公民連携のまちづくりに取り組んでいます。
この動きを支えているのが、岡崎で2016年から始まった乙川の水辺活用の社会実験「おとがワ!ンダーランド」でお世話になったハートビートプラン(以下、HBP)の皆さん。
そのご縁から、三の丸エリアの民間のキープレイヤーが集う「松本城三の丸エリアプラットフォーム(以下、三の丸AP)」の皆さんが、昨年11月に岡崎へ視察に来てくれました。それがきっかけとなり、今回岩ヶ谷くんがゲストスピーカーとして招かれることになったのでした。


いざ松本へ


名古屋からJR中央本線で「しなの」に揺られること約2時間。松本に降り立つと、眼前には雪を頂く北アルプスの山並み。駅前広場の信州ワイン飲み比べイベントに後ろ髪を引かれながら、善光寺街道を通ってまずは女鳥羽川へ。


すかさず女鳥羽川と距離を縮める岩ヶ谷くん


僕は護岸の石垣に見惚れる


女鳥羽川は、岡崎の伊賀川とスケール感が近く、護岸の石垣や舗装されていない土手に風格と親しみやすさを感じます。上流方向にも下流方向にも山が間近に見え、川と山の関係を強く感じられるのは岡崎にはない特徴と言えます。
女鳥羽川に隣接するなわて通りは、歩行者専用の商店街で、飲食店や民芸品をはじめとした土産物屋などが軒を連ねており、平日日中にも関わらず多くの人出がありました(外国人も多い)。

残念ながらHBPの皆さんは研修旅行で不在だったため、事前に託してくれた(HBP新津さんありがとうございます)松本市のおすすめのお店やスポットのリストから蕎麦屋をチョイス。しかし、あいにく予約でいっぱいで入れず…。でも代わりに入った蕎麦屋さんでいただいたそば刺しと鴨ねぎそばは絶品でした。ちなみにこのリストには他にもカフェ、食堂、洋食、とんかつ、町中華、バーと、とても1日ではまわりきれない量で、いつか必ずや制覇したいと思います。


クックさん・久美さん夫妻との再会


クックさん・久美さん夫妻とお店の前で

今回の松本訪問の目的の一つは、岡崎に来てくれたクックさん・久美さん夫妻に再会することでした。お二人はなわて通り沿いでカフェ(Storyhouse)とゲストハウス(Nawate Guesthouse)を運営されていて、女鳥羽川の定期清掃や有効活用に取り組まれています。三の丸APメンバーの中でもONE RIVERの活動に重なる部分が大きく、来岡の際にファミリーでONE RIVERの事務所にも立ち寄ってくれていたのです。木とレンガが印象的なカントリー風のあたたかい雰囲気のStoryhouseは、お二人の人柄を表すようでとても心地よい場所でした。クックさんオリジナルのカクテルを通りに面したテラス席でいただきながら、再会を祝うことができました。


長野県建築士事務所協会松筑支部総会にて講演


講演会の会場は、松本が誇るフルサービス型のホテル・ブエナビスタ。シャンデリア煌めく厳かな会場に気おされつつも、岩ヶ谷くんは見事大役を果たしました。岩ヶ谷くんが示したキーワードの一つ「川とともに生きる自然観」は、アルプスに囲まれ、山と川が身近にある松本の皆さんには強い共感を得ていたと感じました。懇親会でお話した建築士事務所協会の方々は、山小屋を運営されていたり、フライフィッシングをされていたり(岡崎の杉坂ブラザーズのこともご存じでした!)、女鳥羽川だけでなく、松本を流れる川や松本を囲む山々のことについて教えていただき、とても刺激的でした。余談ですが、事務所協会総会に際し祝辞を寄せられた松本市長のお名前は臥雲(がうん)市長。臥雲と言えば、岡崎市民的にはガラ紡を発明した臥雲辰致が思い浮かびます。もしやと思って尋ねると、なんと臥雲市長は臥雲辰致の曾孫だと判明し、岩ヶ谷くんと盛り上がり(笑)。逆に松本の方には「なぜ臥雲辰致を知っているのか?」とびっくりされました。ホテルでの懇親会後、地酒が美味しい飲み屋、仄暗いムードの大人なバー、路地を入ったアングラなバーなどをはしごし、夜は更けていくのでした。


格式ある会場で講演する岩ヶ谷くん


嗜好が結晶化したまち


ブックカフェ「栞日(しおりび)」


山々食堂 豚の角煮定食が絶品


Nawate Guesthouseに宿をとった(これまたとても居心地の良いゲストハウスでした)僕は、はしご酒がたたって痛恨の朝寝坊…。にも関わらず朝食はStoryhouseのベーグルモーニングをちゃっかりいただき(こちらも絶品)、自転車でバンドの練習に出かけるクックさんと再会を約束し別れるのでした。
岩ヶ谷くんとは、これまたお目当ての一つだったブックカフェ栞日で待ち合わせ。栞日は諏訪のリビルディングセンター(通称:リビセン)の東野さんがリビセン立上げ前にリノベーション施工を手がけた店舗で、古材を活かした落ち着きある店舗の雰囲気と素晴らしい本のセレクトに感銘。オーナーの菊池さんは、この少し前に岡崎を訪れており、ANGLEの飯田くんを通じて岩ヶ谷くんと知り合われたというご縁で(前日の講演会にもご参加いただいた)まちなかを案内していただきました。

松本には、店主の嗜好やこだわりが結晶化したような個性的なお店が多く、それらは建物自体や店構え、看板、さりげなく置かれた小物や植栽、本などから滲みだしています。ジャンルは飲食、クラフト・民芸、書籍、古物、登山、ファッションと多岐にわたり、その中でも狭いところを掘り下げたようなこだわりの店が多いので振れ幅が大きいはずなのに、不思議と調和が感じられます。おそらく各々の世界観を大切にしながらも、言葉を交わさずとも場所や建物が重ねてきた時間や文脈を尊重しているがゆえに、不協和音を奏でることなく互いに共存共栄しているという感覚を受けました。

菊池さんは、そうした個性豊かなお店との人脈があり、必ずしも行政とのコミュニケーションが得意ではない、もしくは積極的ではないまちのキーマンとまちづくりを橋渡しするために、一念発起し市議になられたそうです。立ち寄ったお店の店主とフランクに、と同時にわかりやすく市政やまちづくりの情報を伝えつつ、ニーズや課題を汲み取る姿が印象的でした。こうした活動は議員さんにとってはあたり前のことなのかもしれませんが、松本の大きな魅力を構成しているお店や人のネットワークと行政をつなぐチャンネルが新たに生まれたことは、松本のまちづくりにとって非常にポジティブな要素だと感じました。


水辺の縁(えん)と縁(へり)から見えるもの


岡崎と松本。それぞれに歴史や風土、まちのかたちや水辺のありようは違っていても、人と人のつながりや、水辺に惹かれる気持ちはどこか通じ合うものがあります。今回の旅は、そんな“縁”と“縁(へり)”の両方を感じる豊かな時間でした。そして、よそのまちに触れることで、自分たちのホームグラウンドである乙川を新たな視点で見つめ直すきっかけにもなりました。松本の皆さん、HBPの皆さん、素敵なご縁をありがとうございました!(天野)


関連エントリー