2024年1月25日(木) 晴れ
今回はONE RIVERが関わるオクオカ※1での暮らしについて考える「いったーんプロジェクト※2」の一環として、プロジェクトメンバーとともに、撮影とリサーチのためのフィールドワークを行いました。
フィールドワークのテーマは「人の営みが垣間見える自然の風景」。昨年8月に行った初回のフィールドワークでは、真夏のオクオカの風景や最盛期を迎えつつあるぶどう畑の風景を撮影しお話をお伺いしました。戦後、産業のなかった場所に観光として訪れることのできるぶどう園を開いた話や、川に残る水車の跡に自然を活かしながら暮らす人々の苦労と工夫、そして自然への感謝の気持ちを感じる旅となりました。
二回目となる今回は、石と木に注目して実施しました。石も木も人のそばにあり、燃料や土留めなど原始のころからまさに人の営みに欠かせないものでした。さらに、石や木は石仏やご神木となり信仰の対象として、精神的にも人々を支えてきました。今回は、石材店・石切り場、木材の集積や加工場、そして石像やご神木を回る行程。どんな出会いや発見があるか楽しみにしながら、車に乗り込みました。

本記事では、この日私が一番心を打ち抜かれた石切り場の風景とそこでお話いただいた内容を中心に「石」にフィーチャーしてレポートをお届けします。

【今回のフィールドワークで訪ねた場所】

  • 石の都・矢作石工団地の(有)稲垣石材店(上佐々木町中切)
  • (有)中根石材と石切り場(滝町山篭)
  • 石屋の弘法様(大井野町落合)
  • 聖ヶ峰と岩屋観音(岩中町荒井)
  • 岡崎森林組合(明見町田代)
  • (株)しらいの木材加工場(宮崎町清水沢西)
  • 寺野の大楠(夏山町ソラ)

店頭で稲垣さんから岡崎と石の歴史を教わりました。

店頭で稲垣さんから岡崎と石の歴史を教わりました。


稲垣さんは、これまでの主流だった墓石だけではなく石を使った食器など石の新しい可能性を求めてさまざまな商品づくりに挑戦されています。

稲垣さんは、これまでの主流だった墓石だけではなく石を使った食器など石の新しい可能性を求めてさまざまな商品づくりに挑戦されています。

朝一番にお伺いしたのはJR西岡崎駅の南側にある石の都・矢作石工団地(矢作南学区)の有限会社稲垣石材店。店先に墓石や灯籠、石像が並んでいます。日本3大石品生産地のひとつである岡崎市。稲垣さんは石職人だった曾祖父から続く4代目。現在はこの石工団地で石の加工と販売をされています。稲垣さんは日本中の様々な石をご自身の目で見て、自社の持っている技術を活かしながら、墓石だけではなくより生活に身近な器や花器へと変え石の魅力を伝えようとされています。

その活動の1つとしてONE RIVERの事務所が入っている偶偶ビルの1階で毎週水曜日に茶室 INASEという屋号でお店を出されています。ゆったりと流れる空気の中で、稲垣さんが淹れてくださる珈琲やお茶をいただくことができます。

そのあとは、稲垣さんにご案内いただき、有限会社中根石材の石切り場に中根さんを訪ねました。この石切り場は、岡崎産のみかげ石の代表的な石材である「宇寿石(うすいし)」の産地です。岡崎市内中心部から20分程の場所ですが、この距離に石切り場があることをご存知の方は少ないのではないでしょうか。


中根さん(写真右)の解説を聞くメンバー。70年続く石切り作業によって生まれた、圧倒的なスケールをもった風景がありました。

中根さん(写真右)の解説を聞くメンバー。70年続く石切り作業によって生まれた、圧倒的なスケールをもった風景がありました。

山石屋の仕事は山から石を切り出し、注文に応じて切り分けて届けること。もともと1つの山だった場所をコツコツ上から切り出していき、深くえぐれた現在の地形に至っています。中根さんはこの石切り場での作業の様子をYouTubeにて公開しています。(火薬による発破や飛矢(豆矢)を用いた石割り作業)その他コスプレ撮影などにも利用許可を出すなど、新しい取り組みにも積極的です。

人間の尺度を超えた石切り場の中に立ち、石に向き合う中根さんの姿は、お仕事というよりも、石を切ることが彼の生きざまのように見えました。中根さんに、ご自身が切り出された石が使われた住宅等の写真も見せていただき、今度はそちらの現場も訪ねてみたくなるとともに、お話を聞きながら、いかに自分が普段の生活で自然との関わりが不足しているかを痛感しました。しかし、そういう目で見てみれば自分が暮らすまちの中にも自然とつながっているものはたくさんあるのかもしれないとも感じました。ヒトが進化していく過程(例えば分業構造など)で自然との関わりが見えにくくなっていると思います。体に取り入れる食品や身につける衣服、日々暮らす家。天気や季節、災害。このフィールドワークを期に、身近な日常生活の中にある「自然と当たり前に共存している」事実を意識的に思考していくことで、いずれ無意識のうちでも捉えられる、自分なりの自然性を獲得していきたいです。


稲垣さん(右から2人目)と中根さん(右から3人目)と一緒にパシャリ

稲垣さん(右から2人目)と中根さん(右から3人目)と一緒にパシャリ

今回は特に普段の生活で考えることのなかった「石」との距離感を見つめなおすフィールドワークとなりました。「いったーんプロジェクト」では、直接自然に相対する人達へのインタビューや、私たちが実際に歩いてみることで得られたヒントをもとに、これからもオクオカの魅力を掘り下げ、オクオカで暮らすことの意味や意義、自然との向き合い方を考え、伝えていきたいと思います。

「いったーん」のウェブサイトでは、今回のフィールドワークで撮影した写真と共に、オクオカに暮らす人々へのインタビューを掲載しています。ぜひご覧ください。

○参考
【中根さんご本人が編集、投稿しているYouTubeチャンネル】
600万回以上再生されるASMR動画もあります。ご堪能ください。

火薬による発破
https://youtu.be/2ZH-wKNewwk?si=ICLy7_DanmreIvgi

飛矢を用いた石割り作業
https://youtu.be/bbWk3p-m3oA?si=xengsede_tyrQe1o

石切り場でのコスプレ撮影
https://www.youtube.com/watch?v=QCUfCUORSss