レポート NEW
【開催レポート】1本1本手植えする意味を考える。岡崎市下山学区で行うお米づくり「となりの田んぼ」で田植えを実施しました!
もみまきから一ヶ月。「となりの田んぼ」にも田植えの季節がやってきました!
東京都心や名古屋、福岡などで今年初めて30℃以上の真夏日となった2026年5月17日(日)。5月半ばとは思えない暑さのなかで田植えを行いました。「となりの田んぼ」では、機械に頼らない手植えでの田植えを行っています。なぜ機械でできる時代にあえて手で植えることにチャレンジするのか。本レポートでは、当日の様子を振り返りながら、「となりの田んぼ」がどんな取り組みなのか、そして手植えのその先に広がる世界についてお伝えします。
第1回プログラムの記事は、以下からお読みいただけます。
【開催レポート】はじまりの春、出会いの春。2026年も岡崎市下山学区でお米づくり「となりの田んぼ」の1年がスタートしました
もみまき→田植えの間にある「育苗」と「代かき」を想像する
年回6回のプログラムで構成される「となりの田んぼ」では、年間を通じて行われるの田んぼの作業の中でも「もみまき」「田植え」「稲刈り」といったいわゆるお米づくりにおいてここだけは外してはならない部分を中心にプログラムを組んでいます。
ただ、プログラムを組むなかで、どうしても取りこぼしてしまう部分、例えば田んぼに行くまでの畔(あぜ)の草刈りであったり、水路の掃除だったりと、私たちの想像の外にも様々な作業があるわけです。
今回はまず初めに、もみまきから田植えの間にあったもみが苗になるまでの過程「育苗」の様子と、田植えの前に土を細かく混ぜ合わせ、①水漏れを防ぐ、②平らにし苗をまっすぐ植えやすくする、③雑草を抑える…等を目的とした「代かき」の作業の様子をお伝えしました。
田んぼに入るその前に
お米づくりに関して大ベテランの高木田さんによる手植え方法のレクチャー。
「苗3,4本を親指・人差し指・中指でつかんで持ってね~。」
自分でまいたもみから育った苗たちの様子(色や長さ)を観察したり、植え方をイメージしながら、こども達も田植えを今か今かと待ちわびています。苗の根っこ部分をよく見てみると、もみからニョキニョキと緑の芽が出て伸びてきたことがわかりました。
プールに入る前のワクワク・ドキドキに似ている?
さぁ田んぼの前にやってきました。毎年田んぼに入る私たちも入る前は少しドキドキ、でも入ってしまえばワクワクのエネルギーが膨らんできます…。目の前に広がる田んぼは今年も私たちを温かく受け入れてくれます。ちなみに田植え時の水は流す量を抑えているためか触って気持ちいいぬるま湯でした。
水の温かさ、泥の感触、吹き抜ける風の涼しさ、暑い日差し。シオカラトンボやアガエルにウシガエル。おのおのがわが家の苗を大事に抱えてスタートラインに向かいます。人間だけの世界ではない、田んぼという舞台へ踏み込んでいくのです。田んぼに入ると、その歩きにくさに普段どれだけ安全な地面の上に暮らしていたのかを思い知らされます。
人数と体力、そして時間との戦い。
手植えによる田植えは、まさしく人数頼み、体力勝負、時間との戦い…そんな言葉がぴったり。さて私たちは、前進しながら苗を植えていくスタイルで田植えを行っています(後ろむきに進むやり方もあり、それは流派の違いと捉えています)。参加者の目の前には、30cm間隔で印のついた紐がぴんと張られ、その目印に合わせて横一列に並びます。
「せーの、いち、に」
声を合わせ、一束ずつ苗を植える。植えて、前進してはまた植えて。その繰り返し。 周囲を見渡すと、「となりの田んぼ」の近くでは、機械によって植えられた田んぼが整然と広がっています。トラクターで植えられた苗は、まっすぐ美しく並び、おそらく作業時間もずっと短いはず。体験後に機械による田植えを見てしまった日には、やっぱり機械って便利だなぁとなってしまうこと間違いなし。それも一つの発見です。
一方、私たちの田んぼはどうでしょうか。目印があるとはいえ、ほとんどが初心者による人力作業。少し曲がったり、間隔がずれたりしながら、それでもゆっくりと前へ進んでいきます。振り返ると、自分たちが植えた苗のラインが田んぼにすっと浮かびます。手植えによる田植えは、子どもたちの興味と集中力、そして大人たちの執念によって成り立っています。だからこそ、一枚の田んぼをみんなで植え切ったときには、機械では得られない達成感が、たしかにそこに残るのです。
手植えする意味を考える。
なぜ機械でできる時代にあえて「手」で植えることに挑戦したくなってしまうのか。この問いは、「となりの田んぼ」の活動の中心にあるものかもしれません。
問いに対する私たちなりの答え。その1つは、「今、学んでおかないと失われてしまう技術なのではないか」という危機感です。中山間地では、地形的な特性から大規模な農業経営が難しい側面があります。だからこそ、中山間地を技術継承の場として捉え、このような体験農園を続けていくこと。高木田さん世代がまだ健在な今、手植えでこそ体験する意味がある 、そんなことを考えています。
もう1つは、「自然と人とのつながりを取り戻す」行為であるということです。普段の暮らしのなかで見えづらくなっている、自然と人とのつながり。あえて手で植えるという行為は、その感覚をもう一度、自分の身体で確かめなおすためのレッスンとも言えます。もちろん、一度田植えや稲刈りを体験したからといって、急に自然との距離が縮まるわけではありません。それでも、水の温度や泥の感触、風の涼しさ、生き物の気配に触れるたび、距離が少しずつ近づいているように感じます。
そして「となりの田んぼ」には、そんな危機感や意味を共有できる、言葉にはできなくてもいま自分に必要な気がすると直感した人たちが、毎年集まってきているように思うのです。
今回の手植え体験、そしてこれから続いていく「となりの田んぼ」のプログラムを通して、自然とのつながりを少しずつ深めていく。その過程のなかで、人類が積み重ねてきた機械化や省力化の素晴らしさ、そして同時に、自分たちの力だけでは到底コントロールできない自然の大きさにも触れていくことになるでしょう。私たちも「となりの田んぼ」を通じて、先人たちが連綿とつないできた「技術」の流れの中に、少し足を踏み入れているのかもしれません。
便利さの恩恵を知りながら、それでもなお、土に触れ、水に入り、生き物たちと同じ風景のなかに身を置いてみる。そんな体験を通じて、これまで見えなかった自然の輪郭を感じ取る感覚が、参加者それぞれの中に少しでも芽生えていたなら、運営としてとても嬉しいです。
次回(7/26)はかかしづくり&生きもの観察!
田植えのレポートは以上になります。
次回の「となりの田んぼ」は、7月26日(日)のプログラム③「かかしづくり&生きもの観察」です。今回「なぜ手植えでやるのか」と同じく、「かかし」にこめられた意味を見つめながら、オリジナルのかかしを製作しています。また、もみまき、田植えを通じてゆっくり取ることのできなかった生きもの観察の自由時間も予定しています。人間だけの場所ではない、田んぼという豊かな環境に改めて目を向けながら、そこで暮らす存在たちの気配を感じる時間になればと思っています。
次回のレポートも、ぜひお楽しみに。(西村)